動画マニュアルへのこだわり
「こだわる」という日本語。「ちょっとしたことを必要以上に気にする」とか「他人からすればどうでもいいようなことに、気が取られて決心がつかない」といったような、本来は否定的な意味で使われます。
しかし、最近では宣伝文句など「こだわりの味」とか「素材にこだわり抜いた~」など、肯定的な意味に使われることも増えてきました。つまり、「こだわる」には「ネガティブなこだわり」と「ポジティブなこだわり」の2つの意味があるということです。そこで、今回は動画マニュアルへのこだわりについて考えてみました。
動画制作大好きな動画担当者
「〇〇君てさぁ、プライベートでよくビデオ撮影するって言ってたよねぇ」なんてひと言で、動画マニュアルの担当になってしまうことがあります。
子どもの成長をビデオで撮り続け、これまで何十本もの作品を作り上げてきた人、最近ではユーチューバーとして投稿動画を作っている人など、あなたのまわりにも動画づくりを得意とする人は一定数存在します。
そのような人たちであれば「ぜひ任せて!」となることも多いと思います。お願いする側としても、得意であれば「ぜひやってくれ!」と頼みたくなるのもわかります。
しかし、そういう人たちだからこそ「動画マニュアルこだわりの罠」にはまってしまうことがよくあるのです。
こだわりの自信作?
動画づくりが好きな人や得意な人は、ここぞとばかりに、自分の経験や特技を活かそうとします。
「タイトルはどんなデザインがいいだろうか?」「文字が光ったほうがいいかな、それとも回転させてみようか?」「このトランジションかっこいいな」「BGMはどの曲がいいかな」・・・
納得がいくまで考えたり、試したり、あらゆるところにこだわり抜き、時間をかけてとっておきの作品を完成させていきます。動画を作り上げた時の達成感はひとしおなのでしょう。
こだわりの弊害
しかし、このように、知恵を絞り、時間をかけた「こだわりの自信作」はかなり高コストになっていることに制作担当者本人も、まわりの人たちも気づいていません。ひどい場合だと「内製=タダ」なんて思っている人もいるくらいです。
そして、最も悲劇なのは、そのこだわりが動画マニュアルの目的に対して何の役立っていない場合です。
動画マニュアルはあくまでも仕事を習得するためのもの。そのデザインや映像効果、音楽がまったく習得効果につながっていない、むしろ邪魔になることだってあります。
つまり、そのこだわりは、動画を見る側からしたら「どうでもいいこだわり」であり、まさに冒頭でお伝えした「ネガティブなこだわり」なってしまっているのです。
こだわりたいのは理解度
動画マニュアルの本来の目的は作業手順やその技能を理解し、早期に習得すること。それらの作業内容がわかりやすく映し出されていることや表現されていることが重要であり、編集にこだわる必要はありません。
過度な演出はせず、映像はシンプルにすべきであり、こだわるのは「いかに伝わるか」「いかに理解させるか」なのです。そして、映像としての出来栄えや自分自身の満足度に尺度を置かず、その動画マニュアルで学ぼうとする人に見てもらい「本当にわかりやすいのか」「きちんと理解できたか」でその良し悪しを判断してください。
動画マニュアル制作の担当者さんには、ぜひ「理解度」を動画マニュアルの「ポジティブなこだわり」として持っていただくことをお勧めします。